甲状腺疾患・副甲状腺疾患

甲状腺疾患について

甲状腺疾患

甲状腺は喉仏のすぐ下にあり蝶のような形をした臓器で甲状腺ホルモンを合成・分泌し、代謝に関与しています。
甲状腺疾患は甲状腺ホルモンの異常(甲状腺機能亢進症と甲状腺機能低下症)と甲状腺内にできるしこり(良性と悪性)に大別されます。
ホルモン機能異常では、多くの患者さんは薬で治療を続けますが、当科ではこれも専門医により行っています。
手術の適応となるのは多くは甲状腺機能亢進症の中のバセドウ病と甲状腺内にできるしこりです。

バセドウ病

バセドウ病は、自己抗体が甲状腺を刺激することによって甲状腺ホルモンが多く出すぎてしまいます。内服治療による副作用や甲状腺機能のコントロールが不良である場合、大きな甲状腺腫、2年以上経過しても内服中止のめどが立たない症例などは手術や放射性ヨウ素内用療法を考慮します。当科で行う手術は甲状腺亜全摘術(一部甲状腺を残す手術)や甲状腺全摘術をします。甲状腺亜全摘術は残存甲状腺から再燃することもあり、近年は甲状腺全摘術後に甲状腺ホルモンを内服で補充する傾向にあります。

甲状腺腫瘤

甲状腺内にできるしこりに対しては超音波検査を施行し、必要であれば細胞診をして癌細胞の有無を調べます。良性であれば大きさや形状の変化を定期的にチェックしていくことがほとんどです。他院で良性のしこりの手術を勧められた場合には、来院いただければ必要性を再考いたします。
悪性甲状腺疾患には乳頭癌、濾胞癌、未分化癌、髄様癌、悪性リンパ腫があります。このうち約90%は乳頭癌であり、約5%が濾胞癌、髄様癌や未分化癌、悪性リンパ腫は数%の頻度です。しこりの大きさ、甲状腺外への広がり、リンパ節転移、肺などの遠隔転移などの状況によって甲状腺葉切除(甲状腺の半分程度を切除)や甲状腺全摘術とともに甲状腺周囲にあるリンパ節も切除します。できるだけ甲状腺を残す手術を心がけています。また、甲状腺の周囲には気管や血管があり、そういった臓器に癌が広がっていることがあり、こういった経験が少ないと、手術不能といわれたりします。他院で手術不能と言われた症例も内分泌外科専門医を中心に手術可能かどうかについて再考致します。

甲状腺癌の治療について

副甲状腺疾患

副甲状腺は甲状腺の左右の背側に位置する臓器であり、通常は4つ存在することが多いです。副甲状腺は副甲状腺ホルモンを合成・分泌し、血液中のカルシウム濃度が一定になるように調節しています。
副甲状腺ホルモンが出過ぎる病気は原発性副甲状腺機能亢進症と二次性副甲状腺機能亢進症があります。原発性とは副甲状腺自体が原因でホルモンを多く分泌してしまう疾患であり、二次性とは腎臓などの他の臓器が原因で副甲状腺がホルモンを多く分泌する疾患であり、主に透析患者さんが罹患します。

原発性副甲状腺機能亢進症

原発性副甲状腺機能亢進症には1つの副甲状腺だけが原因である腺腫(良性)と癌(悪性)の他に、複数の副甲状腺が原因である過形成があります。
そのうち約90%は腺腫、約10%が過形成であり、副甲状腺癌は稀な疾患です。術前の超音波で腺腫が疑われた場合は腫大した副甲状腺を摘出します。

二次性副甲状腺機能亢進症

二次性副甲状腺機能亢進症では複数の副甲状腺がホルモンを多く分泌する過形成です。手術では4つすべての副甲状腺を摘出後に副甲状腺の一部を腕に移植します。現在のところ他院で4つすべてが取れずに再燃を起こした患者さんの再手術の経験も豊富な川崎医科大学での治療をするようにしています。

※副甲状腺は基本的に甲状腺背側に合計4つありますが、人によって少なかったり多かったりすることや胸骨の裏側などに存在するなどの位置異常があります。このような困難な症例も必要があれば積極的に手術致します。